THE JUILLIARD SCHOOL
ジュリアード学院
ADDRESS
60 Lincoln Center Plaza, N.Y.C.,
NY U.S.A.


OFFICIAL SITE:
 Juilliard

DEPARTMENTS:
Dance ダンス科
Druma 演劇科
Music 音楽科

*** 青山航士さんは96年度 ダンス科入学  

MEMO
 1905年音楽院Institute of Musical Artとして創立した、世界有数の芸術大学。1951年にダンス科がスタートした際、現在の"The Juilliard School"という名称になりました。日本では旧名のまま、「ジュリアード音楽院」と訳されることが多いようですね。それにしても名前が変わってから60年以上も過ぎているとは知りませんでした。
 1968年、演劇科の設立とともにアメリカの芸術の城ともいえるニューヨークのリンカーン・センターに移転し、同じ敷地内のメトロポリタン・オペラハウス、ニューヨーク・シティ・バレエ団、ニューヨーク・フィルハーモニック・オーケストラとともに常に世界の注目を集めています。2003年からは新たにジャズ専攻科が設置され、芸術の最高学府としてなお発展を続け、08年には拡張工事が始まっています。
 2008年現在、アメリカ49州そして46カ国から学生が集まり、在学生はおよそ500名、入学時の平均競争率は13倍超! たったの7.6%しか合格しない難関です。
 これまでのダンス科教授陣のリストに、20世紀を代表する振付家であるマーサ・グラハムやホセ・リモンの名前が並んでいるのを見るだけでも、そのレベルの高さがうかがえます。クラシックとモダンの両方の技術を兼ね備えた"fusion dancer"を育成することが目標とのことですが、青山さんがどんなに現代的な振付を踊っていても、どこかに漂う端正さを思うとなるほど、という気がします。
 また、ダンス科在籍中はレッスンに多くの時間を費やすので、仕事との両立は無理なこと、同じ理由から大学近辺に住む必要があることなどが公式サイトに書かれています。踊りの技術や振付だけでなく、スケジュール管理から舞台終わりのお辞儀までを教育する、というシビアで明確なプロ養成の方針もアメリカらしいですね。

 五輪フィギュア男子銀メダリスト、ポール・ワイリーの振付を手掛け、映画『バレエ・カンパニー』(2003)でも振付・出演したラー・ルボヴィッチ、ダンスカンパニーを主宰してモダンの世界をリードし続けるポール・テイラーもこのジュリアード学院ダンス科出身者です。演劇と舞踊を独自のやり方で融合させたピナ・バウシュもジュリアードに留学していましたし、青山さんが在籍していた当時の学科長はネザーランド・ダンス・シアターの創始者でした。
 創造的で新しい世界を切り開いていくタイプが多く、併設のバレエ学校からバレエ団にというヨーロッパ式のシステムを持つニューヨーク・シティ・バレエとは好対照と言えるでしょう。そしてまた、ダンスの精鋭を集める二つの学びの場が一つのセンター内にあることに、ニューヨークという街の凄さを思い知ります。
 卒業公演Senior Graduation Concertは毎年五月にあり、演目によっては現役の一流ダンサーによる特別指導を受けたものが披露され、とてもアマチュアとはいえないレベルの高さだそうです。 視察に来た関係者からその場で入団のオファーがあることも少なくなく、日本の武道家とのコラボが話題になっている振付の鬼才、ウィリアム・フォーサイス本人が見に来たりもするというから驚きです。
 アメリカという国の「才能の発掘と育成」にかける情熱は世界一だと常々思っていますが、この大学がその象徴的な場であることは間違いないようですね。





 09年9月のお茶会の際、青山さんがジュリアードの学内コンサートの写真と、入学試験の願書に添付した写真を持ってきてくれました。
 ジュリアードのダンス科が、日本で音楽科ほど話題に出ないのは、完全な少数精鋭主義で「とにかく受からない」からだと聞いたことがあります。実力はもちろんのこと、今後指導を受けることによってどれほど成長するか、踊り手としての資質が大きな判断基準になるとも聞きました。
 とはいっても実際に入学できる方が少ないので、これまではどんな審査をするのか漏れ聞くこともありませんでした。今回はじめて具体的な内容を聞けたわけですが、青山さんが受験した頃は写真審査で約半分が落とされたとのこと。噂以上の厳しさですね。

 ポーズは指定され、上の図のように、両手(腕は下がり気味)が水平になるよう広げ、右脚バットマン・タンデュという基本ポーズです。伸ばした足の靴底が見えるのがいいらしいと聞いて、100枚くらい撮影したそうです。「靴底が見える」には、股関節が外側に完全に開いて、さらに膝関節、足首が外側へしなっていないといけません。鍛錬の成果が問われると同時に、訓練では得ることのできない、持って生まれた関節の形状や靭帯の質なども関わるだろうと思います。青山さんの下肢の強さ、関節の可動域の広さには驚くことが多いのですが、見せていただいた写真も、膝からつま先までが奇麗な流線型を描いてしなっていました。両手が「水平」になるよう腕を伸ばせば、体の歪みや肩のラインの癖も出やすいし、片足を横に出すことでバランス感覚も見えるだろうし・・・。考えれば考えるほど、この「腕は第二ポジション、右脚バットマンタンデュ」の奥深さははかり知れません。そして同時に、青山さんが持っている踊り手としての資質がどれほど稀なものかを改めて感じます。