SHINLA 森羅 ~宇宙を吹き渡る風~
2000年11月 天王洲アイルスフィアメックス

2001年8月16日-27日 エディンバラ国際フェスティバル
 Edinburgh International Festival(Scotland)
2001年11月 天王洲アイルスフィアメックス

2002年2月 日本武道館
2002年4月 浪切ホール
2002年9月10日-11日
 ロビン・ハワード・ダンス・シアター(ロンドン)
 Robin Howard Dance Theater(LONDON, UK)
2002年10月1日-2日 草月ホール
2002年10月5日 リサイタルホール

構成・演出: 香瑠鼓
振付: 香瑠鼓 森山開次 青山航士
殺陣: 野口浩彰
音楽: 楯直己

CAST
女流詩人 香瑠鼓
落武者/兄 青山航士
刀 森山開次
武将 野口浩彰
妹 吉田仁美
陽 青木裕記
陰 箆津弘順

MEMO

 演劇界では世界最大規模の祭典、スコットランドで開催されているエディンバラ国際フェスティバル2001年参加作品で、青山航士さん主演です。CM界のカリスマ振付家・香瑠鼓さんの企画により、上演されました。
 戦乱の世、ある女流詩人が自分の生き方を「落武者」に、自分の大切にしているものを「妹」、「武将」を武士道精神を持つ社会の象徴として物語を書き始める-という設定で、セリフはなく、身体表現のみによる舞台でした。
 青山航士さんは妹を武将に殺され、仇を討ったのち自害するまでの生身の人間としての表現と、死後の「中有」の世界というのでしょうか、何かを探しあぐね、瞑想し、覚醒する精神としての表現を求められる役でした。
 今思い出しても、青山さん以外に、あれだけの精神的な透明感を出せる男性舞踊手を探すのは難しいだろうと思います。CM制作で何百人(ひょっとしたら千人単位?)というダンサーを見ている香瑠鼓さんの慧眼としか言いようがありません。
 また、音楽は商業主義とはかけ離れたへヴィなロックが中心でしたが、「ノリ」ではなく、実際にロックという音楽を「踊る」のことができる舞踊手というのは本当に限られていると思います。青山さんはあの高い身体能力の限りをつくして、曲のインパクトと共鳴するように、また増幅するように踊っていました。特に最終章の"MANDALA"での、地を踏みしめて両手で印を結びながら両腕で円を描く動きには、塵一つない真空の磁場を張るような気迫にあふれていたのを今でもよく思い出します。





 この作品を創作する過程が、NHKの『にんげんドキュメント ~ダンスよ心を語れ~ 振付家・香瑠鼓の世界』として2001年10月25日に放映されました。香瑠鼓さんが超多忙なスケジュールのなか、ストーリーの構成を練るところからフェスティバルで上演されるまでが記録されています。
 舞台映像が素晴らしく、短く編集されてはいますが、青山航士さんが踊っている生の舞台のあの澄み切った感じが伝わる貴重な映像だと思います。また、青山さんが作品序盤で見せる文楽人形を模した振付について、稽古場での様子と青山さんのインタビュー、舞台映像が収録されていて、創作の過程を追うことができるのはやはり『にんげんドキュメント』ならではだと思います。青山さんの動きに対する非常に正確な観察眼が稽古場の様子から伺われ、時間にすればほんの数分という部分なんですが、綿密に仕上げられていくのがよくわかりました。
 個人的に日本の古典は好きでよく見ていても、日本の古典の動きを「ダンス」に取り入れたものに、それまで納得がいったことはなかったのですが、青山さんの文楽人形の動きには、動きの捉え方、重心の感覚など、型の忠実な写し取りが感じられました。そのうえで一つの表現として観客に感情を伝えてくるダンスを目にするのは初めてで、それから後も目にしたことはありません。青山さんの表現者としての謙虚さと忠実さと真摯さ、そして強さの伝わる映像です。
 現在は「保存」されている状態で一般公開はされていませんが、ぜひNHKオンデマンドかアーカイブ入りしてほしいですね。